アチェコーヒーの飲み方 ─ 混ぜる文化と楽しみ方
インドネシア・スマトラ島の最北端にある「アチェ州」。この地域は、世界的に有名なコーヒーの産地です。中でもガヨ高地で育つ「ガヨコーヒー」は、スペシャルティ市場でも高く評価され、ナッツやチョコを思わせる厚みのある味わいが特徴です。
そんなアチェでは、コーヒーはただブラックで飲むだけでなく、“何を混ぜるか”によって楽しむ文化が根付いています。ここでは、代表的な飲み方を紹介していきます。
練乳を加える ─ Kopi Sanger(コピ・サンガー)
アチェで最も定番なのがKopi Sanger(コピ・サンガー)。濃いめに抽出したコーヒーに練乳を加え、砂糖を少し足す場合もあります。ポイントは甘みで苦味を隠さず、あえて残すこと。夜のカフェや屋台で疲れを癒す一杯として親しまれています。
パームシュガーを使う ─ Gula Aren Style
白砂糖の代わりにパームシュガー(gula aren)を加える飲み方も人気。カラメルのようなコクがあり、アイスコーヒーとの相性が抜群です。Banda AcehのカフェではIce Coffee Gula Arenとして提供されることも多く、若者を中心に支持されています。
ジンジャーを加える ─ Kopi Jahe
Kopi Jahe(コピ・ジャヘ)は、ジンジャーを加えた一杯。ピリッとした刺激が濃いコーヒーに混ざり、身体を温めてくれます。雨季や夜の冷える時間帯に人気で、飲み物というより“体調を整える習慣”のような存在です。
スパイスを加える ─ スパイスコーヒー
カルダモン、クローブ、シナモンなどを加えるスタイルもあります。香りを重ねて複雑な風味を楽しむ方法で、アチェの歴史とも深く関わっています。
歴史的背景:アチェは16〜17世紀、香辛料貿易の拠点として栄えました。カルダモンやクローブはヨーロッパに高値で取引され、この地域の生活に深く根付いています。料理だけでなくコーヒーにもスパイスを取り入れるのは、ごく自然な流れだったのです。
グラスを逆さにする ─ Kopi Khop
アチェ西部メウラボー発祥のKopi Khop(コピ・ホップ)は、ソーサーをかぶせてグラスを逆さにするユニークな提供スタイル。飲むときはグラスを少し持ち上げ、ソーサーに落ちたコーヒーをすするんです。単なる味覚体験ではなく、会話のきっかけにもなる、まさに“見せる飲み方”。
まとめ
アチェのコーヒーは、練乳・パームシュガー・ジンジャー・スパイス・逆さグラスなど、多彩な飲み方で楽しまれています。そして何より、アチェコーヒー豆そのものが、こうした飲み方にぴったり合うからこそ文化として定着してきました。
日本でも身近な材料で再現できるので、次にコーヒーを淹れるときはぜひ試してみてください。ちょっとした工夫で旅先アチェの空気を感じられるはずです。